遊佐町の水循環
なぜ、遊佐町には豊かな湧き水があるのか
遊佐町には、至るところで清らかな水が地面から湧き出しています。この豊かな水の恵みは、鳥海山の成り立ちや地形的な特徴と深く結びついています。鳥海山と遊佐町の水の関わりを見ていきましょう。
町内で循環する水
水の旅は日本海から
遊佐町の水の循環は、日本海から始まります。海から蒸発した水は水蒸気となって空へ昇り、雲を形成しながら風に運ばれ、鳥海山へ到着。
山の斜面を登るにつれて冷やされ、雨や雪となり山に降り注ぎます。降った水は地中へ浸み込み長い年月をかけて地下を移動。湧き水として地表に姿を現し、川を経て再び海へと戻っていきます。遊佐町の水は、海と山と大地を巡る途切れることのない旅を続けているのです。
鳥海山に降る大量の雨と雪
鳥海山は日本海の海岸線から山頂までがとても近く、その距離わずか約16km。海を渡って水蒸気を含んだ風が平地で水分を失う間もなく急激に冷やされ、鳥海山に雨や雪をもたらします。特に冬は、対馬暖流の上を渡り水蒸気をたっぷり含んだ北西季節風が吹き込み、鳥海山に大量の雪をもたらします。その量、年間20,000mm以上との調査結果も。
特別な地形が生む大量の雨と雪が遊佐町の豊かな水の源泉です。
町内で完結する水の地産地消
遊佐町に降った雨や雪の多くは、町を貫流する月光川水系の河川に集まり、日本海へと流れ込みます。特筆すべきは、この月光川水系の流域が町内で完結していること。つまり、遊佐町に降った水は遊佐町の大地を潤し、遊佐町を流れる川を経て、遊佐町に面した日本海へと戻っているのです。
水の循環がこのようにひとつの町内で完結しているのは全国的にも珍しく、遊佐町の水は、まさに「地産地消の恵み」と言えます。
水が湧き出す仕組み
そんな町内を循環する水の巡りの中で、どのような仕組みで「湧水(ゆうすい)」が湧き出しているのでしょうか。
鳥海山という「天然の貯水タンク」
鳥海山に降った雨や雪は、地表だけを流れ下るのではなく、その多くが地中へとゆっくり浸み込んでいきます。浸み込んだ水は地下を長い時間をかけて移動し、やがて町内の各所から湧き出します。鳥海山に降った水が私たちの足元に届くまでには、数十年という歳月がかかると言われています。鳥海山は、雨や雪を何十年もかけて蓄え、少しずつ届け続ける、いわば巨大な「天然の貯水タンク」なのです。
溶岩が作る「水の通り道」
鳥海山は、古くより繰り返し噴火を重ねてきた火山です。この噴火の歴史が、地中に水の通り道を作り出しました。
溶岩が流れると、外気に触れた表面はすばやく冷えてもろい層になる一方、内部の溶岩はまだ流れ続けます。内部の溶岩が流れ下るにつれて、表面のもろい層はベルトコンベアーのように溶岩の下へと引き込まれ、地層の中に埋め込まれていきます。こうして地中にできた目の粗い層が、水が浸み込み流れることができる「水の通り道」(透水層)となっています。この層は、水が長い距離をゆっくりと移動する間に不純物を取り除く天然の濾過フィルターとしての役割も果たしていて、遊佐町に澄んだ湧き水をもたらしてくれています。
湧き水が多い場所には、理由がある
溶岩が流れた先端部分では、「水の通り道」となる層が地表近くに露出しやすい構造になっています。そのため遊佐町では、冷え固まった溶岩流の先端部にあたるエリアで特に多くの湧水を確認することができます。長い年月をかけて貯えられ、地下をゆっくりと流れてきた水が、溶岩の先端という地形の節目で、ようやく地表へと湧き出してくるのです。